「ランニングをすると免疫力は上がるのかな?」
「マラソンを走ると風邪をひきやすいって本当?」
「免疫力を上げるための走り方が知りたい」
こんなお悩みが解決できます。
新型のウイルスが世間を騒がしてる昨今、「免疫力」という言葉もよく聞かれるようになりました。
また、ランナーを取り巻く環境にも変化があり、一時は外を走っているだけで目の敵にされるような時期もありました。
周りの目を気にするがあまり、走ることをやめてしまった方もいるのではないでしょうか?
「感染が怖いし、周りの目も気になるからランニングはやめておこうかな」
「走って体力を使うと、免疫力も下がってしまうのではないか?」
こんな風に考えている方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、「免疫力」をテーマに、「ランニングが免疫力にどのような影響を及ぼすのか?」また、「免疫力を上げるためにはどんなことをしたらいいのか?」を、様々な医学的知見をもとに、ランニングトレーナーとしての観点からお伝えさせていただきます。
この記事を読むことで、ランニングが免疫力に与える影響を学ぶことができ、免疫力を上げていくためにはどんなことに気をつけて走ればいいのかが分かります。
「膝や足の痛みに悩まされない走り方」「より楽に、より楽しく走れる走り方」「全くのランニング未経験者からフルマラソン完走まで導くサポート」の指導を得意としています。
今までに1,000名以上のランナーのお悩みに対してアドバイスし、200名以上のランナーをマンツーマンで指導してきた実績があります。
目次
ランニングは免疫力を上げるのか?下げるのか?
結論から言うと、
「ランニングは免疫力を上げることができます」
ただし、過度なランニングは免疫力を下げてしまう恐れがあるため、以下を目安にしてみてください。
ポイント
【頻度】:週2〜3回
【時間】:30〜60分
【ペース】:スロージョグペース(会話や鼻歌を歌う余裕があるペース)
ランニングと免疫力の関係性をお話しする前に、まずは「免疫力」とは何かを確認しておきましょう。
免疫力とは?
免疫力とは、「細菌やウイルスから身体を守ってくれる防御システムが働く力」のことです。
身体の中には、単球やリンパ球などの免疫に関わる細胞(免疫細胞)が備わっています。
この免疫細胞が働くことで、様々な病気にかかってしまうことを防いでくれています。
例えば、がん細胞は1日5000個体内で発生していると言われています。
放っておいたらがんとして発症してしまうため、免疫細胞が働くことによって、発症する前に退治してくれているのです。
つまり、免疫細胞が活性化することで、免疫力を上げることができ、風邪はもちろん様々な感染症やがんの発症まで予防することができるのです。
次は、その免疫細胞を活性化し、免疫力を上げるためにはどんなことをしたらいいのか?について解説していきますね。
免疫力を上げるには?
免疫細胞を活性化し、免疫力を上げるためには以下の3つの条件があります。
ポイント
①体温を上げる
②ストレスを溜めない
③腸内環境を整える
それぞれ詳しく解説していきますね。
①体温を上げる
免疫細胞が正常に働ける体温は36.5℃程度と言われています。
そこから体温が1℃下がると免疫力が30%ほど下がり、1℃上がると免疫力が最大5~6倍ほど上がります。
風邪を引くと熱が出るのも、体温を上げて免疫細胞を働きやすくし、風邪症状を引き起こしているウィルスを退治しやすくするためです。
容易に解熱剤を使うと、この免疫力を高める働きを弱めてしまうので注意したいですね。
②ストレスを溜めない
プレッシャーや不安などの過度な精神的ストレスを感じたり、疲労が蓄積したりして自律神経のバランスが崩れます。
自律神経のバランスが崩れると、免疫細胞は正常に働きにくくなります。
また、過度なストレスは自律神経の乱れ以外にも、「コルチゾール」というホルモンの分泌が増えます。
一時的な分泌の増加は問題ないのですが、分泌過剰が続いてしまうと、免疫細胞の働きの低下や減少を引き起こします。
③腸内環境を整える
腸にはおよそ1000種類、1000兆個もの腸内細菌が住んでいて、その腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分けられます。
そして、それぞれの腸内細菌のバランスが「2:1:7」の割合を維持できると免疫細胞が活性化します。
反対に、このバランスが崩れて悪玉菌が優勢になると、免疫力の低下を招きます。
腸内には全体の約6~7割の免疫細胞が存在していると言われています。
つまり、身体の免疫力の6〜7割は、腸内の免疫細胞の働き次第ということになります。
さて、ランニングはこの3つの条件をどのように満たし、免疫力を上げることに貢献しているのでしょうか?
ランニングはなぜ免疫力を上げるのか?
ランニングが免疫力向上の役に立つ理由をみていきましょう。
①「ランニング」と「体温を上げる」
走ることで全身の血流がよくなり、体温が上がります。
ランニングを習慣的に実施することによって、毛細血管が拡張していくため、一時的な血流改善だけでなく、ランニング時以外でも血流改善による体温の向上が期待できます。
また、走ることで脚に筋肉が付いてくるため、筋肉量の増加により基礎代謝が向上します。
基礎代謝が向上することによって、体温も上げることができます。
②「ランニング」と「ストレスを溜めない」
ランニングをすることによって、高揚感や満足感が高まるホルモンである「エンドルフィン」や「エンドカンナビノイド」の分泌が増えます。
高揚感や満足感が高まることによって、ストレスを発散することができます。
また、不安を解消し、ポジティブな気分をもたらしてくれるホルモンである「セロトニン」の分泌も増えます。
常にポジティブな状態でいられるため、ストレスを溜め込まないようになります。
③「ランニング」と「腸内環境を整える」
ランニングによる着地衝撃によって、腸が刺激され、腸内運動が活性化します。
これは便秘の改善にも繋がりますね。
また、定期的な運動習慣がある方は、運動習慣がない人と比べて、腸内細菌が活性化し、善玉菌を増やしやすいと言われています。
このように、ランニングをすることで、免疫力を上げることができます。
しかし、やりすぎは禁物です。
なぜなら、過度なランニングは免疫力を下げる恐れがあるからです。
過度なランニングは免疫力を下げる
過度な有酸素運動は、活性酸素を必要以上に発生させます。
活性酸素は免疫細胞にダメージを与えるため、免疫力を下げてしまいます。
また、45分以上の有酸素運動はコルチゾールの分泌が急増するという研究データがあります。
過度な運動により身体がストレスを感じた結果ですが、コルチゾールの過剰分泌は免疫力の低下を引き起こします。
運動強度に関しても、心肺機能に大きな負荷をかける運動をすると、一時的に免疫細胞は減少してしまいます。
このような理由から、高頻度、長時間、高強度のランニングは、免疫力を上げるどころか下げる結果になってしまうのです。
では、ランニングで免疫力を上げるための走り方について詳しく解説していきますね。
免疫力を上げるための走り方
ランニングで免疫力を上げるためには、以下の3つを目安にして走ります。
ポイント
【頻度】:週2〜3回
【時間】:30〜60分
【ペース】:スロージョグペース(会話や鼻歌を歌う余裕があるペース)
走る頻度は週2〜3回にして、できるだけ連日で走らないようにします。
これは、疲労を回復する時間を作り、過度な活性酸素の発生を抑えるためです。
走る時間は、30分〜60分とします。
これは、「エンドルフィン」や「エンドカンナビノイド」、「セロトニン」といったストレスの軽減につながるホルモンの分泌を高めつつ、免疫力を下げてしまう恐れのあるコルチゾールの過度な分泌を抑える、といったバランスを取るための時間設定です。
走るペースは、会話や鼻歌を歌う余裕があるスロージョグペースにします。
これは、心肺機能に過剰な負荷をかける高強度な運動で、免疫細胞を減少させないためです。
この3つの目安を守って走ることによって、ランニングで免疫力を上げることができます。
逆に言うと、目安以上に走ってしまうと、健康にいいどころか免疫力を下げてしまい、病気にかかりやすくなってしまいます。
「てことは、マラソンは走るなってこと?」
「マラソンを走ると免疫力が下がって病気になりやすいってこと?」
僕はそうは思いません。
最後に、その理由をお伝えしますね。
マラソンは免疫力を下げるのか?
まず、マラソンという運動だけを見ると、免疫力は下がります。(マラソンに向けた強度の高いトレーニングも同じ)
それは、今までお話ししてきたことからも分かるように、あきらかに「過度な運動」になるからです。
実際に、マラソンを完走した後の人と、そうではない人の風邪の引きやすさを比較した研究では、マラソンを完走した後の人の方が風邪を引きやすかったというデータもあります。
しかし、これは僕が思うに単なるアフターケア不足です。
フルマラソンを走った後は、いつも以上に身体が疲れていて、疲労を回復するための栄養や休養を必要としています。
そこで、疲労回復に必要な栄養を補い、しっかりと休養をとることで、免疫力の低下を防ぎ、病気にかからなくすることができます。
また、マラソンを走ろうと思うと、約3ヶ月〜半年かけて計画的にトレーニングを積んでいきます。
日々のトレーニングをこなすために、体調管理にはより一層気をつけるようになります。
マラソンやマラソンに向けたトレーニングには、走った人にしか分からない達成感や日々の充実感があります。
これは、「ストレスを溜めない」と言う部分において、大きくプラスに働きます。
普段から走っていて、しっかりとトレーニングが積めていると、45分以上走ってもストレスになるどころか心も身体もスッキリするようになります。
おそらく、身体機能が向上してストレス耐性が付いてくるからだと思います。
このような理由から、マラソンを走ること自体は免疫力を下げてしまうのですが、それを差し引いたとしても、マラソンにはそれ以上のプラスの効果をもたらしてくれることがたくさんあります。
よって、僕は休養期間を確保した年2〜3回のフルマラソンで、必要な栄養が充分に摂れてさえいれば、健康のためにプラスに働くと考えています。
まとめ
今回は、「ランニングと免疫力」をテーマにお話しさせていただきました。
話をまとめますね。
【免疫力とは?】
・免疫力とは、「細菌やウイルスから身体を守ってくれる防御システムが働く力」のこと。
・免疫細胞が活性化することで、免疫力を上げることができ、風邪はもちろん様々な感染症やがんの発症まで予防することができる。
【免疫力を上げるには?】
①体温を上げる
②ストレスを溜めない
③腸内環境を整える
【ランニングはなぜ免疫力を上げるのか?】
①「ランニング」と「体温を上げる」
・走ることで全身の血流がよくなり、体温が上がる。
・走ることで脚に筋肉が付いてくるため、基礎代謝が向上して体温が上げる。
②「ランニング」と「ストレスを溜めない」
・高揚感や満足感が高まるホルモンである「エンドルフィン」や「エンドカンナビノイド」の分泌が増え、ストレスを発散することができる。
・不安を解消し、ポジティブな気分をもたらしてくれるホルモンである「セロトニン」の分泌が増え、常にポジティブな状態でいられるため、ストレスを溜め込まないようになる。
③「ランニング」と「腸内環境を整える」
・ランニングによる着地衝撃によって、腸が刺激され、腸内運動が活性化する。
・運動習慣がある方は、腸内細菌が活性化し、免疫力を上げる働きをする善玉菌を増やしやすい。
【過度なランニングは免疫力を下げる】
・過度な有酸素運動は、活性酸素を必要以上に発生させ、免疫細胞にダメージを与えるため、免疫力を下げてしまう。
・45分以上の有酸素運動は「コルチゾール」の分泌が増え、過剰に分泌されると免疫力の低下を引き起こす。
・心肺機能に負荷をかける強度の高い運動をすると、一時的に免疫細胞は減少してしまう。
【免疫力を上げるための走り方】
・頻度:週2〜3回
・時間:30〜60分
・ペース:スロージョグペース(会話や鼻歌を歌う余裕があるペース)
【マラソンは免疫力を下げるのか?】
・マラソンという運動だけを見ると、免疫力は下がる。
・マラソンを走った後に、疲労回復に必要な栄養を補い、しっかりと休養をとることで、免疫力の低下を防ぐことができる。
・日々のトレーニングをこなすために、体調管理により一層気をつけるようになる。
・マラソンやマラソンに向けたトレーニングには、達成感や充実感があり、「ストレスを溜めない」と言う部分で大きくプラスに働く。
・休養期間を確保し、必要な栄養を摂った上での年2〜3回のフルマラソンであれば、健康のためにプラスに働く。
と言うお話しでした。
健康であるためには、「運動」だけではなく、「休養」や「栄養」も大切です。
特に、ランナーは一般の方以上に栄養に気をつけていただきたいですね。
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免疫力の話で言うと、「笑う」ことでも免疫力が上がると言われています。
あなたも、笑顔で楽しく過ごせるように、ランニングを日々の生活に上手く取り入れてみてください。
それでは、また。