「空腹で走ると脂肪がよく燃える」
そんな情報を見て、朝食を抜いて走っているランナーも多いのではないでしょうか?
たしかに、空腹状態で走ることで“脂肪をエネルギーに変える力”は鍛えられます。
しかし、それがそのまま「マラソンに有利か?」と聞かれれば、答えはNOです。
特にフルマラソンを走るランナーにとっては、空腹ランが逆効果になるケースもあります。
パフォーマンスを上げるどころか、後半の失速につながる可能性もあるのです。
今回は、「なぜ空腹ランがマラソンに不利になるのか?」を、脂質代謝と糖質代謝の観点から分かりやすく解説します。

この記事を書いてる僕は、2つの医療系国家資格(鍼灸師・柔道整復師)と栄養指導の資格(スポーツ栄養医学指導士)を保有しているランニングトレーナーです。
「膝や足の痛みに悩まされない走り方」「より軽やかで、より効率的な走り方」「全くのランニング未経験者からフルマラソン完走まで導くサポート」の指導を得意としています。
今までに1,000名以上のランナーのお悩みに対してアドバイスしてきた実績があります。
目次
空腹で走ることのデメリットとは?マラソンには逆効果かも
最近、「空腹状態で走ると脂肪が燃えやすくなる」という情報を目にしたことはありませんか?
確かにこれは間違いではありません。
脂肪をエネルギーに変える能力(脂質代謝)を高める効果があるからです。
しかし、マラソンを走る人にとっては注意が必要です。
空腹ランには見落とされがちなデメリットが多く、逆効果になることもあります。
今回は、その理由を詳しく解説していきます。
「脂肪が燃える=マラソンに有利」とは限らない
空腹の状態で走ると、体は糖質が不足しているため、代わりに脂肪を使ってエネルギーを作ろうとします。
この仕組みを利用して、「脂肪が燃えやすい体になる」と考える人もいます。
そして、「脂肪を効率よく使えれば、マラソン後半の失速を防げるのでは?」という期待につながるわけです。
たしかに一理あります。
ですが、この考え方は条件付きでしか当てはまりません。
マラソンの主なエネルギー源は「糖質」
ハーフマラソンやフルマラソンのように、ある程度スピードを出して走る運動では、主なエネルギー源は糖質です。
脂肪も一部使われますが、あくまで補助的。
糖質代謝の能力が低いと、レース中にエネルギー切れを起こしやすくなります。
つまり、マラソンでは脂質代謝よりも糖質代謝の強化が優先なのです。
脂質代謝の落とし穴
脂肪を使ってエネルギーを作る脂質代謝は、糖質代謝と比べていくつかのデメリットがあります。
✔︎酸素あたりエネルギー効率が悪い(燃費が悪い)
✔︎エネルギーに変換するまでに時間がかかる
✔︎脂肪を燃やすためにも、ある程度の糖質が必要
つまり、糖質が完全に枯渇した状態では、脂肪すらエネルギーにできなくなるのです。
空腹ランを繰り返して脂質代謝ばかりに頼る体になると、糖質代謝の能力が落ちる可能性があります。
そうなると、マラソン本番でペースを維持できず、後半に失速してしまうリスクが高まります。
空腹ランが招く「エネルギー切れ失速」
マラソンでよくある「30kmの壁」。
この原因の多くは、オーバーペースによる糖質の枯渇です。
自分の走力以上のペースで走ることで、体内に蓄えていた糖質を使い過ぎてしまいます。
更に、普段から空腹ランをしていると、糖質代謝が低下して、エネルギー効率も低下しているため、糖質が枯渇するスピードも速くなってしまいます。
糖質が枯渇してしまうと、脂質すら使えなくなるため、完全にエネルギー不足の状態に陥って失速してしまうのです。
空腹ランが活きるのは「超長距離レース」
ただし、空腹ランが全く無意味かというと、そうでもありません。
ウルトラマラソンやトレイルランのように、低強度で長時間走り続ける種目では、脂質の使用割合が高まるため、脂質代謝を鍛えるメリットがあります。
このようなケースでは、糖質を温存しながら脂肪を効率よく使う能力が求められるため、戦略的に空腹ランを取り入れるのも有効です。
まとめ:マラソンランナーには空腹ランは逆効果
「空腹で走ると脂肪が燃えやすくなる」という情報は一部正しいですが、すべてのランナーに当てはまるものではありません。
とくに、ハーフマラソンやフルマラソンを走る人にとっては、脂質代謝よりも糖質代謝の向上が重要。
無理な空腹ランは、かえってパフォーマンスを落とす原因になりかねません。
もし空腹ランを取り入れるなら、自分の目的やレースの距離に応じて慎重に使いましょう。